出雲崎町
町域不明
とある二階建て木造旅館
590 あなたのうしろに名無しさんが・・・
じゃ、10年前に聞いた全然怖くない話。
季節は夏も終わろうとしている頃。出張で、出雲崎のとある二階建て
木造旅館に、男女数人で泊まることになった。男女は当然、二階の
別々の部屋に。仕事の後ゆえ、全員疲れていたので、少し休憩してから
晩飯を取ることにした。食事は一階の食堂で、一同会して取る。
食事の時間となり、一同集まったが、女性一人だけ遅れて食堂に
やってきた。彼女は湯上りの風情で、だるそうな様子だった。
食事が一段落すると、彼女が私に、
「妙な話なんですけど、笑わないで下さい」、「はあ?」と私。
「入浴前に仮眠をとったんですけど、部屋に出たんです」
「なにが」
「幽霊だ、と思う。寝てたら、急に動けなくなって、誰かが私の身体を触りまくるんです」
一同、彼女を見つめた後、顔を見合す。彼女が仮眠をとってた時間には、
全員、既に食堂にいたからだ。海水浴シーズンも既に終わり、その日は
私達以外の客はいない。
「変質者か?」と、私。彼女「姿は見えないんですけど、
気配と触られている感触があったんです」
夢でも見たんだろうと思って、その場は何事も無く、翌朝その旅館を発った。
後日、たまたま、出雲崎出身の知人との会話でその旅館の話題が出た。
そこで、彼女の話が理解できたような気がした。
知人は言った。
「ああ、あそこね。昔、赤線だったらしいよ。建物はそのままなんだ」